アイデアが生まれでる牧場の話‐書評‐嶋浩一郎のアイデアのつくり方

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本書はかなり良書なので本当は隠しておきたいのですが・・・・・・
ここだけの秘密ということでお願いします。

著者は博報堂ケルトのCEOである嶋浩一郎氏。「スカパー!がやらなきゃ誰がやる?」のキャンペーンなどを生み出した人です。本書では、そんな気鋭のクリエイターのアイデア発想法がおしげもなく公開されています。

■アイデアはカオスから生まれる

そのメソッドは驚くほどシンプルです。情報を集めて、時系列に並べていくだけ。集める情報も「ゴリラの血液型はみんなB型」や「車のナンバーに『へ』という字は使わない」などのトリビアや史実など一見どうでもいいような情報ばかりです。これらの情報を分類分けなどせず、ただ順番に一冊の手帳に書き込んでいきます。そんな単純なメソッドでアイデアが生まれてくるのと疑問に思うかもしれません。しかし、この手帳が、次から次へとアイデアを生みだす放牧場になるのです。

そもそもアイデアとはなんなのでしょうか。
有名なジェームズ・W・ヤングの『アイデアのつくり方』からその原理をご紹介いたします。

・アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
ちなみに本書はジェームズ・W・ヤング氏の『アイデアのつくり方』のオマージュっぽいです。著者はこれらの手帳を眺めながら、ある訓練をすることで、アイデアを生む「化学変化」が起きるのだと述べています。その訓練法とはキーワードの掛け合わせ。たとえば、書店にある本のタイトル同士を、ひとつの上位概念にくくっていきます。『殿中でござる』と『丁髭無頼伝』という2つだと「侍」という概念でまとめます。このようにして、手帳の中に無造作に広がった情報を化学反応のように組み合わせることでアイデアを生み出していくのです。

情報カードでおこなう「アイデアのつくり方」

著者はモレスキンという手帳でこのメソッドをおこなっています。ぼくはモレスキンよりも”PoIC”でおこなう方がより効果的にアイデアをだせるのではないかと思っています。PoICとは、Hawkexpress氏が考案した情報カードによる知的生産のワークフローです。PoICも「カードにアイデアを書き時系列に保存していくだけ」というシンプルなメソッドになっています。

具体的な手法については『PoIC マニュアル』をご覧下さい。偶然にも、24日から、gihyo.jpで『Re:PoIC〜ライフハッカーのためのPoIC入門』という連載も始まりました。そちらもあわせて読むとさらに理解が深まると思います。

このPoICがモレスキンより有効だと思うのは、アイデア一枚一枚がバラバラになっているので、視覚的に組み合わせをつくれるからです。「あのカードとこのカードを並べ替えて。やっぱり違うな」などということを手でふれながら目で確認しながらできることです。簡単にいえば嶋メソッド+KJ法=PoICであるのです。

■情報は生き物そのものである。

このふたつのメソッド。共通点は情報を生き物として考えていること。嶋メソッドでは情報を分類することは「カゴ」に入れて情報を殺してしまうことだと考えています。自由に放牧させることによって、たくましいアイデアが生まれるのだという主張です。一方、PoICでは4つに分類された情報カードを「文化の遺伝子」と表現しています。ただ時系列にならべていくだけで、そこに新たな生命がやどってきたのでしょう。

これは情報の価値というのは、情報それ自体にあるのではないということではないでしょうか。どんな情報でも受け手によって、価値を生み出すことができるのです。まさに情報にはゴミはないのです。

■おいしり料理をつくるには

情報はよく「生もの」にも例えられます。正確な情報をより早く手に入れることができるか。それが勝負の分かれ目になることもあります。為替市場などでは、情報の鮮度がもっとも重要視されるのは当たり前です。しかし、例え鮮度が落ちてきた情報も、冷蔵庫でしっかりと冷凍保存しておけば、いざというときの役立ちアイテムになります。昨日の残り物でも、一工夫加えれば美味しい料理に早変わり。

今の時代、おいしい情報は簡単に手に入るようになりました。おいしい食材を探すスキルも大事ですが、おいしり料理を作れることはもっと大事ではないでしょうか。これ以上の「すぐにおいしい簡単レシピ」は、ぼくは知りません。皆さんもぜひ簡単レシピでみんなをあっと驚かせてみませんか?

イデア次第で人生変わるかもしれませんよ。

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