50冊レビュー 5冊目:「かけひきの科学」

タイトル:かけひきの科学
副題:情報をいかに使うか
著者:唐津 一

「情報」という言葉。
高度情報化社会とよばれる今の世で、情報の必要性が叫ばれていますが
この「情報」とは一体なんなのでしょうか。

そんな疑問に答えてくれたのがこの一冊でした。
タイトルはかけひきの科学となっていますが、
副題にあるとおり「情報をいかに使うか」ということに
焦点をあてた内容です。かけひきとはつまり相手の持っている情報を推測し、こちらに有利な情報をいかに切り出すかの情報戦であると著者は述べています。

かけひきに関する本ではありますが、
冒頭にあるとおりこの本で僕が一番感動したのはその情報の概念です。
本書を読むことで情報の捉え方が大きく変わりました。

「情報とは、それが到着、あるいはそれを入手したとたん、環境を一変させる力を持つ。もちろん到着しないかぎり、なんの力ももないのである。(P.35より引用)」

これだけじゃわかりにくいかもしれないのでひとつ具体例を。
恋人が浮気をしているという事実があるのに、彼氏さんは知らない。
彼氏さんは彼女が浮気しているという「情報」を手に入れるまで
浮気している事実がない状態と同じ気持ちでいます。
当たり前のように感じますが、ここに情報のもつ性質があわられています。

このように考えると情報量という言葉の意味もはっきりしてきます。
試しに下の2つの文を比べて見てください。

・あなたは明日死にます。
・あなたは明日死ぬかもしれませんね。それは明日にならないとわかりません。

文字数が多いのは下の文ですが、情報量が多いのは上の文です。
それはなぜかというと「自分は明日も楽しく生きている」という予測を裏切っているからです。決して「文字数=情報量」ではないのです。情報量とは、予測をいかにひっくり返すか、環境を一変させる力を持っているかで計られるべきものなのです。こう考えるとTVというメディアがいかに情報量が低いかということもわかると思います。

さらにその情報の信憑性がどれくらいあるかということも重要になってきます。例えば上の文を医者に言われるのと、通りすがりのおっさんに言われた場合も情報量は全く違います。

「情報」の重要性がとわれている今の時代。
「情報」というものの本質をとらえる上で
本書はひとつの指針になるのではないでしょうか。